せかいや

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エンジニアが見た「販売士2級」の世界 (一般流通常識 編)

「販売士」って資格、ご存知の方はどれくらいいるのでしょうか。

■販売士とは

販売士はまさに「販売のプロ」といえます。激動する流通業界で勝ち抜くための必須の資格・検定であり、「流通業界で唯一の公的資格」として社会的にも高い信頼と評価を得ています。
 検定試験は、販売に必要な商品知識や販売技術、仕入や在庫管理、マーケティングなど、より高度で専門的な知識を持つ人材の育成を目指した内容となっています。

http://www.kentei.ne.jp/retailsales/

という、小売の資格で、易しい中小企業診断士みたいなイメージでしょうか。
エンジニアで販売士の資格持ってる人はたぶんいない(会ったことない)。
考えたら「SE」と「売り子さん」って水と油の存在ですよね。


実は大学4年時、就職も決まり暇な時間が出来たのでこの2級を取得しました。
すっかりそんなことも忘れていた(でも話のネタには結構受けるのでよく話す)のですが、
実はこの免許は更新制。

更新の時期、5年を向かえ、更新用講習テキストが送付されてきました。

めまぐるしく変化する小売の世界、5年たって教本はどう変化したのか!?
また、システムエンジニアとして働くようになった自分はどんな感想を抱くのか!?
ということを書きとめます。


~前置きここまで~


販売士の学習内容は2部構成です。
・一般流通常識
・管理知識/技術

このうち、管理知識/技術だけ2級独自の内容。
今回は平成23年に改訂された教本を元に、販売士の世界をエンジニアの目線で観察したいと思います。
まずは「一般流通常識」に目を通してみます。

全体を通して

インターネットを通した小売の世界は一切語られていません。
受験当時も「クリック&モルタル」なんて時代錯誤もはなはだしい用語を学習したのですが、この世界観は変わらないようです(注1)。
教本の中に「カルフール」などの小売店名は結構出てくるのですが、
「Amazon」「楽天」等々は一度も!記載なし!

店舗を持たないECサイトが販売士教本に取り上げられる日はいつなのでしょうか。

システム屋さんは経営に興味なし

CRMの章でこんな文面が↓

情報システム担当者は、コンピューターの専門的知識には長けているが、経営戦略を立案することには関心がない傾向にある。

時代はBPM・DevOpsだなんだと、どんどんシステムが経営に入っていく風潮があるのですが、
さすが教本。そういうところは一切触れてきません。

AIDMA(アイドマ)からAIDEES(アイデス)へ

従来のマーケティングでは、消費者の行動過程を「AIDMA」という単語で定義していました。

Attention(注意)
Interest(興味、関心)
Desire(欲求)
Memory(記憶)
Action(行動)

しかし教本は「AIDEES」に変化したと言います。

Attention(注目)
Interest(関心)
Desire(欲求)
Experience(購入・体験)
Enthusiasm(顧客の心酔)
Share(推奨)

マーケティング理論が「売ったことから始まる」形に変化しつつある、とあります。
これは情報発信ツールの豊富さが一因だと思うのですが、そのあたり(ITワード)に対する言及はありませんでした。
この片手落ち感!

Twitterが登場!

街(商店街)の活性化の取り組みとして、福岡市の商店街「大名なう」の記載がありました。

大名なうとは、大名そしてその周辺地域(天神・赤坂・警固・今泉 などなど)を愛する人たち(お客様、店主、メディア、IT関連者 等々)が、それぞれの強みを活かし、ツイッターなどのツールを利用して、この地域の情報を発信していくプロジェクトの名称です

http://daimyonow.jp/

解説の通り、インターネットを通じた販売ではなく、あくまで集客に閉じた話です。
「ネットで物品を売る」事は禁則事項となっているのでしょうか。

※関係ないけど、2011年8月27日で更新がとまっている。大丈夫か「大名なう」…。

感想

普段生きてる世界と全然違う世界って面白いですね。
ですが、かたくなに「ネットで物品を売る」ことを拒否している(全く言及しない)姿勢が気になりました。
20年後くらいにはAmazonが取り上げられているかもしれないです。

今回はITに絞ってお話しましたが、
「得意客に対してどうアプローチしていくか」なんて興味深い話もたくさんありました。

次回「管理知識」も乞うご期待!(←)



注1:
システム用語としての「クリック&モルタル」はこんな感じ↓で、

商品の予約や注文はインターネットを通じて行い、商品の受け渡しや代金の支払いは店舗へ誘導するといったやり方

http://www.itmedia.co.jp/im/articles/0302/28/news012.html

インターネット上での消費者からのアクションを前提として語られていて違和感はないのですが、
5年前の教本では「インターネットで消費者に商品情報を宣伝し、店舗でその商品を購入してもらう形式」と定義しており、
受験当時も『いやいや…。それならもはや”モルタル&クリック”の時代になってるよ』と感じていました。